西郷隆盛の愛犬はツンじゃない?上野銅像のモデルと全13匹の真相

西郷隆盛の愛犬はツンじゃない?上野銅像のモデルと全13匹の真相に関する疑問を徹底的にまとめました。詳細な解説をご覧ください。

日本人の脳裏に焼き付いている「西郷隆盛と愛犬ツン」のパブリックイメージ。しかし、彫刻史の一次史料や宮内庁関係の記録を検証すると、上野の山に立つ犬は「ツンそのものの姿」ではないことがはっきりと分かります。

上野の西郷隆盛像を手掛けたのは、本体が彫刻界の巨匠・高村光雲、そして連れている犬は動物彫刻の第一人者であった後藤貞行です。像の制作が始まった明治20年代半ば、西郷がもっとも可愛がっていた名犬「ツン」はすでにこの世を去っていました。後藤貞行はツンの正確な姿を再現しようと鹿児島へ調査員を派遣し、生前の姿を知る関係者からの聞き取り取材を重ねました。しかし、ツンの写真や精密なスケッチは残されていませんでした。

さらに決定的な齟齬がありました。実在したツンは「メス(牝犬)」だったのに対し、上野の銅像の足元を注意深く観察すると、堂々たる「オス(牡犬)」の特徴がはっきりと彫刻されています。明治の国家事業として建立される威厳ある銅像において、小柄な牝犬よりも雄々しい牡犬の骨格が求められたという時代背景が影を落としています。

そこで後藤貞行がモデルとして抜擢したのが、当時の海軍軍人・仁礼景範子爵が飼育していた純血の薩摩犬(オス)や、西郷が生前に可愛がっていた別の愛犬「カヤ」系統のオス犬でした。後藤は複数の優秀な薩摩犬を自室に住まわせ、筋肉の躍動や毛並み、耳の立ち方を徹底的に観察。ツンの特徴である「ピンと立った三角耳」と「鋭い虎毛の面影」を宿しつつ、肉体は筋骨たくましい牡犬の薩摩犬を融合させたのです。つまり、上野の銅像の犬は、特定の1匹を写し取ったものではなく、明治の彫刻技術が生み出した「理想の薩摩犬」というべき芸術的フィクションでした。

山田 真由

山田 真由

自動車・モビリティライター

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