猿の毛づくろいは何を食べてる?塩分説の誤解と驚異の社会性を徹底解剖
猿の毛づくろいは何を食べてる?塩分説の誤解と驚異の社会性を徹底解剖とはどのようなものなのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。
霊長類学者ロビン・ダンバーが提唱した「社会的脳仮説」が示す通り、猿にとっての毛づくろいは個体と個体をつなぐ極めて洗練されたコミュニケーションツール(社会的グルーミング)です。
群れで暮らすニホンザル社会には、厳格な順位制(序列)が存在します。力関係や母系の血統によって定められた上下関係の中で、毛づくろいは権力構造を滑らかに機能させる潤滑油としての役割を担います。観察データを分析すると、毛づくろいのやり取りは決して五分五分の対等なギブ・アンド・テイクではありません。多くの場合、序列の低い個体が順位の高い有力個体に対して率先して毛づくろいを提供する非対称性が観察されます。
下位個体が上位個体に毛づくろいを行う動機は明確です。日頃から手厚くケアを提供しておくことで、採食場所で近接することを大目に見てもらったり、集団内のいざこざにおいて上位個体からの攻撃を回避したり、外敵やライバルとの衝突時に味方についてもらう「同盟関係」を担保するためです。毛づくろいに費やす労働力と時間は、群れの中で安全に生き延びるための保険料であり、通貨そのものと言えます。
一方で、上位個体が下位個体に対して毛づくろいを返す場面も皆無ではありません。とりわけ激しい争い(喧嘩)が発生した直後には、勝者側から敗者側へ、あるいは仲介個体を通じて迅速な毛づくろいが交わされる「和解行動(Reconciliation)」が頻繁に確認されます。闘争によって高まった群れ全体の緊張感を即座に沈静化させ、集団崩壊のリスクを未然に防ぐ高度な政治的駆け引きが、この指先の触れ合いによって展開されています。