八相の構えは実戦で使えるのか?刀を立てる理由と真の強さを徹底解明

八相の構えは実戦で使えるのか?刀を立てる理由と真の強さを徹底解明についての疑問解決ガイドをご紹介します。

「なぜ刀を寝かせず、立てて構えるのか」という疑問に対する決定的な答えは、平安時代末期から戦国時代にかけての「甲冑(鎧兜)の構造」にあります。

当時の武士が身につけていた筋兜や星兜には、顔面を保護するための巨大な「吹返(ふきかえし)」があり、頭頂部や前面には家格や威信を示す巨大な「前立(まえだて)」「鍬形(くわがた)」などの立物が取り付けられていました。この重装備の状態で現代剣道のように刀を頭上高く真っ直ぐ振りかぶる上段の構えをとると、柄(つか)や腕が兜の装飾や吹返に激しく激突してしまいます。いざ切り結ぶ瞬間に自らの兜に引っかかってしまえば命取りになりかねません。

そこで編み出されたのが、刀を右耳の脇へとわずかに外し、垂直に近い角度で立てる八相の構えでした。この位置であれば、いかに巨大な前立を持つ兜を着用していても一切干渉することなく、上段と同等の威力を秘めた上方からの強烈な斬撃を放つことができます。

刀を立てる理由はそれだけにとどまりません。生体力学と戦場環境の観点から、次の3つの決定的メリットが存在しました。

  • 重量負担の軽減:当時の合戦刀や太刀は1.2kg〜1.8kg近くあり、さらに数十kgの甲冑を背負っていました。腕の筋力だけで刀を前方や頭上に保持し続けると数分で筋疲労を起こします。刀をほぼ垂直に立てることで、刀の重心を骨格の直上に乗せ、筋肉への負荷を最小限に抑えながら長時間の対峙を可能にしました。
  • 視界(視野)の確保:狭い兜の庇(ひさし)や面頬(めんぼう)を装着した状態では視界が極端に狭まります。頭上や身体の正面に刀を構えると前方の敵を見失う危険がありますが、刀を側面に外して立てることで、左右の広角な視界を確保できました。
  • 閉所や密集陣形での取り回し:城内の狭い廊下、藪の中、あるいは味方が密集する戦列において、刀を横に寝かせたり長く前に突き出したりすると味方や壁に接触します。垂直に刀を立てる姿勢は、専有面積を最小限に抑えながら即座に抜刀・斬撃へ移行できるコンパクトな戦闘形態でもあったのです。
山下 哲也

山下 哲也

自動車・モビリティライター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。

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