まつとし聞かば今帰り来むの意味とは?在原行平が込めた別れの真相
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「まつとし聞かば今帰り来む」が古典和歌の傑作として評価される理由は、緻密に計算された言語技巧にあります。一首の中に2箇所の見事な掛詞(かけことば)が組み込まれています。
1. 「往(い)なば」と「因幡(いなば)」の掛詞
「立ち別れ」に続く「いなば」は、動詞「往(い)ぬ」(去る・行く)の未然形+接続助詞「ば」(〜したならば)という言葉と、赴任先の地名である「因幡(いなばの国)」が重ね合わされています。「お別れして行ってしまうならば」という意味と「因幡の国へ向かう」という意味を同時に成立させています。
2. 「松(まつ)」と「待つ(まつ)」の掛詞
「峰に生ふる」という修辞から植物の「松」を導き出しつつ、「私を待つ」という心情の「待つ」を掛けています。自然の風景を描写しながら、相手の恋情や愛着へと滑らかに接続する構成です。
文法構造を品詞分解すると、以下のようになります。
・まつ(待つ):タ行四段活用動詞「待つ」の終止形
・と:格助詞(引用)
・し:副助詞(強調)
・聞か(きか):カ行四段活用動詞「聞く」の未然形
・ば:接続助詞(仮定条件「もし〜ならば」)
・今(いま):副詞(「すぐに・ただちに」の意)
・帰り(かえり):ラ行四段活用動詞「帰る」の連用形
・来(こ):カ行変格活用動詞「来(く)」の未然形
・む:意志の助動詞「む」の終止形(「〜しよう」)
ここで使われている「今」は「現在」ではなく、「すぐに、直ちに」という即時性を表す古語副詞です。意志の助動詞「む」と結びつくことで、「知らせを聞いた瞬間に駆け戻る」という強い情熱が宿ります。