妬みとはどんな感情か?嫉妬との違いと人間関係を救う心理メカニズム
妬みとはどんな感情か?嫉妬との違いと人間関係を救う心理メカニズムとはどんな影響があるのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。
人間はなぜ、他人の幸福を素直に喜べず、時に他人の不幸に安堵してしまうのでしょうか。この謎を解く鍵が、妬みの心理的メカニズムと、脳科学が解き明かした深層心理の暗部です。
社会心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した「社会的比較理論」によれば、人間は絶対的な基準を持たない事象について、常に他者と比較することで自己の位置付けを確認します。ここで決定的なのは、人間は「遠すぎる存在」には妬みを抱かないという点です。大谷翔平選手の桁違いの年俸や海外ロイヤルファミリーの豪華な暮らしに激しい妬みを覚える人はいません。妬む人の心理と原因の根底にあるのは「類似性」と「心理的距離の近さ」です。同期入社の同僚、同じ職種のライバル、学生時代の友人など、「条件がほぼ同じはずの相手」が頭一つ抜け出した瞬間、脳は強烈な不公平感を感知します。
このとき脳内では何が起きているのでしょうか。自然科学研究機構放射線医学総合研究所などの研究チームが実施したfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験によると、被験者が強い妬みを感じているとき、身体的な痛みを感じた際に反応する「背側前帯状回(dACC)」が激しく興奮することが実証されています。つまり、他者の成功を見ることは、文字通り脳が物理的な打撃を受けたのと同等の苦痛をもたらしているのです。
そして、この脳の痛みを相殺するために出現するのがシャーデンフロイデの真相です。シャーデンフロイデとは、ドイツ語で「他者の不幸を喜ぶ気持ち」を指します。実験では、妬みの対象者がスキャンダルで失脚したり失敗したりした際、脳の報酬系である「腹側線条体」が活性化し、快楽物質であるドーパミンが放出されることが確認されました。他人の転落を目撃することで、脳は「痛みの緩和」と「快感の報酬」を同時に受け取ってしまうため、ネット上の炎上叩きや職場での陰湿な告げ口行為が依存症のように繰り返されるのです。
さらに見逃せないのが、自己肯定感と妬みの関係です。従来の俗説では「自己肯定感が低い人ほど妬みやすい」と語られがちでした。しかし、近年のパーソナリティ心理学の追跡調査では、より危険なのは「脆い高自己肯定感(Fragile High Self-Esteem)」を持つ人物であることが判明しています。実態の伴わない肥大化したプライドを抱える人間は、他者の成功を「自己の全能感に対する直接的な攻撃」と錯覚します。その結果、プライドを防衛するために相手を激しく攻撃し、悪性妬みを撒き散らす加害者へと変貌するのです。