月の裏側が見えない理由とは?潮汐固定の仕組みと探査機が暴いた真実

月の裏側が見えない理由とは?潮汐固定の仕組みと探査機が暴いた真実について専門的な視点から解説いたします。専門家の見解をお届けします。

人類が月の裏側の姿を初めて目にしたのは、1959年10月のことでした。旧ソビエト連邦が無人探査機「ルナ3号」を打ち上げ、撮影した粒子の粗い30枚ほどの月の裏側写真を地球へ送信したのです。現像された不鮮明な画像を見た世界中の天文学者たちは、表側にあるはずの広大な「海」が裏側に全く存在しない事実に驚愕しました。

そして1968年12月、NASAのアポロ8号が人類として初めて月の軌道を周回し、裏側を肉眼で直接目撃する歴史的快挙を達成します。月周回軌道に入り、月の裏側へ回り込んだ瞬間、探査船と地上管制センター(ヒューストン)との無線通信は完全に途絶しました。天体そのものが巨大な電波遮蔽壁となるこの現象は「LOS(Loss of Signal:信号喪失)」と呼ばれます。

地球からの電波も届かず、地球の姿すら完全に隠された漆黒の孤絶空間。約45分間の電波沈黙を抜けた後、司令船に搭乗していたジム・ラヴェル飛行士は、地上に向けてこう無線で語りかけています。

「月は基本的に石膏のような灰色で、石膏ボードの粉のようだ。広大で、孤独で、寄せ付けない虚無の世界に見える(A vast, lonely, forbidding expanse of nothing)」

この極限の孤立環境ゆえに、月の裏側への着陸探査は極めて難易度が高いとされてきました。しかし2019年1月3日、中国の無人探査機「嫦娥4号(じょうが4ごう)」が、月裏側の南極エイトケン盆地内にあるフォン・カルマン・クレーターへ世界初となる軟着陸に成功しました。地球と通信できない裏側とのやり取りを可能にしたのは、地球と月のラグランジュ点(L2)付近に事前に配置された中継衛星「鵲橋(じゃっきょう)」です。

さらに2024年6月には、後継機である「嫦娥6号」が裏側の土壌サンプル約1,935グラムの採取に成功し、地球への帰還を果たしました。持ち帰られたサンプルの解析は世界的な注目を集め、裏側の地質年代やマグマ活動の歴史が次々と解明されつつあります。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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