精液検査の基準値はどこから異常?Who最新データと改善策の全貌
精液検査の基準値はどこから異常?Who最新データと改善策の全貌について押さえておきたい 事実を厳選して解説いたします。
読者が最も知りたい「結局のところ、数値がどこまで落ちたら医学的な異常なのか」という疑問に対する臨床の答えは明確です。精子濃度が1,600万/mL未満を「乏精子症」、運動率が40%未満(前進運動率30%未満)を「精子無力症」、精液中に精子が全く見当たらない状態を「無精子症」と診断します。
ただし、これらの名称は病名というよりも「今回の検査で見られた状態」を指す記述診断に過ぎません。数値の低下度合いによって、生殖医療におけるステップアップの選択肢が変わってきます。
精子濃度が1,000万〜1,500万/mL前後であればタイミング法による自然妊娠の可能性は残されていますが、500万/mLを下回る場合は人工授精(IUI)、さらに100万/mL未満になると体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)が有力な選択肢となってきます。精子運動率の目安についても同様で、前進運動率が15%〜20%を下回ると、精子が自力で卵子の外殻(透明帯)を突き破ることが困難になり、顕微鏡下で受精をアシストする顕微授精の適応が検討されます。
では、なぜ精子の濃度や運動率が低下してしまうのでしょうか。主な臨床的要因は次の3つに集約されます。
第1に、男性不妊の最大の原因とされる精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)です。陰嚢内の静脈弁がうまく機能せず、血液が逆流して鬱血する疾患で、成人男性の15%、男性不妊を訴える方の約40%に見られます。血液の熱によって精巣の温度が上昇し、精子を作る機能(造精機能)が低下したり酸化ストレスでDNAが損傷したりします。
第2に、精液量が少ない原因として見落とせないのが、精管の不完全閉塞や射精障害、さらには精液が膀胱側へ逆流してしまう逆行性射精です。また、過度な緊張によって副交感神経が抑制され、精嚢や前立腺の収縮が不十分になることも射精量の減少を引き起こします。
第3に、高熱・生活習慣・服用薬の影響です。精子は熱に極めて弱いため、検査の1〜2ヶ月前にインフルエンザや新型コロナウイルスなどで38度以上の高熱を出していた場合、一時的に精子数が激減し、無精子症に近い数値まで落ち込むことがあります。この事実を知らないまま検査を受けると、「不妊症になってしまった」と激しい誤解を生む原因になります。