進行性核上性麻痺の初期症状と余命の真相|パーキンソン病との違いを解説
進行性核上性麻痺の初期症状と余命の真相|パーキンソン病との違いを解説にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。
進行性核上性麻痺という病気は、1964年にジョン・スティール(John Steele)、ジョン・リチャードソン(John Richardson)、イエジ・オルシェフスキ(Jerzy Olszewski)の3人の神経病理学者によって初めて報告されました。かつてはその発見者たちの名を取って「スティール・リチャードソン・オルシェフスキ症候群」とも称されていました。
近年の分子生物学的研究によって、その発症メカニズムの核心が「異常リン酸化タウ蛋白の異常蓄積」にあることが突き止められています。タウ蛋白は本来、神経細胞の骨格である微小管を安定化させる役割を担っていますが、これが過剰にリン酸化されて凝集し、神経細胞やグリア細胞を破壊していきます。本疾患では、微小管結合部位が4つ存在する「4リピート(4R)タウ」が選択的に蓄積する「4Rタウオパチー」の代表格と定義されます。
難病情報センターの病理データによると、病変は淡蒼球、視床下核、小脳歯状核、赤核、黒質、脳幹被蓋に集中し、星状膠細胞内に特徴的な「房状アストロサイト(Tufted astrocyte)」を形成することが確定診断の組織学的ゴールドスタンダードとされています。
対症療法が主であった治療現場ですが、根本的な進行抑制を目指す新薬開発の治験が国内外で進展を見せています。
- 抗タウ抗体医薬の開発:異常タウ蛋白が細胞外へ伝播していくプロセスを阻害し、病変の拡大を食い止める分子標的薬の国際共同第II相・第III相試験が継続して検証されています。
- アンチセンス核酸(ASO)療法:タウ蛋白をコードするMAPT遺伝子のmRNAを直接標的とし、毒性を持つタウ蛋白の産生そのものを根本から抑制する画期的な遺伝子標的薬の臨床治験が進められています。
- 微小管安定化薬およびリン酸化阻害薬:構造が崩れた微小管を補強し、キナーゼ活性を制御して異常リン酸化を防ぐ低分子化合物の探索が行われています。
現時点では保険適用された根治療法は確立されていないものの、早期診断技術とバイオマーカー(脳脊髄液中や血液中のリン酸化タウ、タウPET画像診断)の精度向上により、ごく初期段階で進行を抑え込む治療介入への道筋が着実に切り開かれつつあります。