ナノメートルとは?10億分の1Mの極小世界と半導体2Nmの真相
ナノメートルとは?10億分の1Mの極小世界と半導体2Nmの真相とは一体何なのか? 主要なファクトを整理してお届けします。
ナノメートルを理解する上で避けて通れないのが、電磁波、とりわけ「光の波長」との関わりです。人間が肉眼で認識できる「可視光線」の波長は、おおむね380 nm(紫色)から780 nm(赤色)の範囲に収まります。この物理的事実こそが、ナノスケールの世界を観察・加工する際の決定的なハードルとなってきました。
物理学には「光の回折限界(レイリー限界)」という法則が存在します。光を用いた顕微鏡では、照射する光の波長の約半分(可視光であれば200 nm程度)より小さな物体を光学的に結像させることができません。ウイルス(約100 nm)やDNA(約2 nm)を肉眼を介した光学顕微鏡で見ることができないのは、レンズの性能不足ではなく、光そのものの波長が対象物よりも長いためです。
半導体製造の現場でも同様の壁が立ちはだかってきました。シリコンウェハーに微細な電子回路を焼き付ける露光技術は、かつて波長365 nmの水銀ランプ(i線)や、波長193 nmのArFエキシマレーザーが主流でした。しかし回路が数十ナノメートル台へと微細化する過程で、波長の太さが微細パターンの形成を阻む限界に達したのです。
そこで実用化されたのが、オランダのASML社が独占的な技術を持つEUV(極端紫外線)露光装置です。EUVの波長はわずか13.5 nm。軟X線に近い極短波長を用いることで、後述する最先端プロセスの極小回路の形成が可能となりました。ナノスケールの科学技術とは、光の性質そのものを極限まで手なずける歴史そのものと言えます。