ムトウハップとは?販売中止の真相と武藤鉦製薬の悲劇・代替品を追う
ムトウハップとは?販売中止の真相と武藤鉦製薬の悲劇・代替品を追うとはどのようなものなのか? 詳しい意味を整理してお届けします。
この騒動において、武藤鉦製薬側には製造物責任法(PL法)上の欠陥も、製品安全性の瑕疵も一切ありませんでした。同社は事件の頻発を受け、パッケージに「酸性物質と絶対に混ぜるな」という警告シールを急遽貼付し、販売店への注意喚起文を同梱するなど可能な限りの自衛策を講じていました。
しかし、世論の過熱とドラッグストアチェーン各社のリスク回避姿勢は、同社の努力を無慈悲に飲み込みます。店頭からの撤去は事実上の取引停止を意味し、全国の問屋から倉庫へ送り返されてきたのは返品の山でした。武藤鉦製薬にとって六一〇ハップは売上高の大部分を占める基幹製品であり、その流通が完全に遮断されたことは即座に致命傷となったのです。
「人の命を救い、皮膚の苦しみを和らげるために造ってきた薬が、人を死に至らしめる道具として消費されていく――」当時の経営陣や現場の職人たちが味わった精神的苦痛は想像を絶するものがありました。どれほど安全を訴えても、社会全体に染み付いた「危険な薬剤」というレッテルを剥がすことは叶いませんでした。
2008年10月、同社は六一〇ハップの製造中止を正式発表。そして同年12月、製品回収と取引先への精算を終えた武藤鉦製薬は、従業員を解雇し工場の操業停止と廃業という苦渋の決断を下しました。昭和恐慌や戦中・戦後の物資困窮を乗り越えてきた名古屋の老舗製薬メーカーは、製品の過失ではなく理不尽な悪用とモラル・パニックによって、81年の誇り高い歴史に幕を閉じたのです。