インフレとデフレはどっちがいい?物価安の罠と生活防衛のリアル

インフレとデフレはどっちがいい?物価安の罠と生活防衛のリアルに関する疑問を徹底的にまとめました。専門的な情報をご覧ください。

多くの生活者が「デフレのほうが良かった」と感じてしまう最大の理由は、「物価が下がる局面」と「給料が下がる局面」に時間差(タイムラグ)が存在するからです。モノの値段が下がり始めた直後は、手持ちの給与で買える商品が増えるため、一時的に生活が豊かになったかのような錯覚を覚えます。しかし、その甘い罠の先に待ち構えているのが、日本経済を30年にわたり縛り付けたデフレスパイラルの悪夢です。

デフレスパイラルの連鎖は、以下のような逃げ場のない循環を形成します。

  1. 買い控えの発生:「来月にはもっと安くなるかもしれない」と考えた消費者が、住宅や家電、自動車などの高額消費を先送りする。
  2. 企業の価格破壊競争:売れない商品をさばくため、各社が身を削る安売り競争に突入し、企業の営業利益率が極端に悪化する。
  3. 人件費の削減と設備投資の凍結:利益を失った企業は新規投資を止め、正規雇用の抑制、非正規雇用への置き換え、昇給停止やボーナスカットに踏み切る。
  4. 可処分所得の減少と再度の消費減退:給与明細を見た生活者はさらに防衛的な節約志向を強め、消費現場から客足が遠のく。

かつて就職氷河期を経験した世代の証言を検証すると、この残酷さが浮き彫りになります。当時、大手メーカーの採用面接を受け続けたある40代男性は、当時の取材メモにおいて「どんなに自己PRを磨いても、企業側が人を雇う体力そのものを失っていた。新卒カードを失った瞬間に非正規雇用のループから抜け出せなくなった」と述懐しています。

さらに見過ごせないのが、借金や住宅ローンを抱える家庭へのダメージです。デフレ下ではモノの価格や自分の給与は下がり続けますが、過去に借りた住宅ローンの元本額面は1円も減りません。物価が20%下がったとしても、毎月12万円の住宅ローン返済額は12万円のままです。手取り給与が減少するなかで固定の借金返済比率が跳ね上がり、自己破産や担保割れによる住宅手放しが相次いだ歴史は、デフレがもたらした最大の爪痕といえます。

山田 真由

山田 真由

自動車・モビリティライター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest