ミレー『種まく人』なぜ物議?山梨とボストンへの旅とゴッホへの影響

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美術ファンの間で長年熱い視線が注がれているのが、「『種まく人』は世界に2枚存在する」という事実です。一方は日本の山梨県立美術館が誇る至宝、もう一方はアメリカ屈指の名門であるボストン美術館が所蔵する逸品です。両者は同じ構図を持ちながら、筆致や色彩、さらには画面に漂う空気感において驚くほど明確な違いを持っています。

項目山梨県立美術館 所蔵版ボストン美術館 所蔵版専門家・学芸員の見解制作年1850年1850年頃山梨版がサロン出品作そのものであるとする説が現在極めて有力。作品サイズ縦101.6cm × 横82.6cm縦101.0cm × 横82.5cmサイズはほぼ同寸。同一のキャンバス規格が使用されている。タッチとマティエール荒々しく厚塗り(インパスト)、筆の勢いが直接残る動的質感滑らかで繊細、筆跡が丹念に抑えられた詩情豊かな仕上がり感情の高ぶりと初発の衝動を宿す山梨版と、完成度を高めたボストン版。地平線と光の描写丘の傾斜が急で、薄暮の黄昏空がドラマチックに強調される光の階調が柔らかく、大気全体に穏やかな夕景のトーンが広がる山梨版は厳しい労働の過酷さが際立ち、ボストン版は崇高美が際立つ。来歴と収蔵背景1977年、山梨県が競売で約4億円で落札。1978年開館の目玉にアメリカのコレクター、クインシー・ショー氏の寄贈(1917年受贈)山梨版は地方自治体の英断として世界の美術館界を驚かせた。

この種まく人 違いをめぐっては、美術史研究者の間でも激しい検証が続けられてきました。X線撮影や光学調査による下絵の解析が進んだ結果、キャンバス上にミレー自身による度重なる試行錯誤や構図の修正跡が生々しく刻まれているのは山梨版であることが判明しています。制作時の情熱がほとばしる山梨版に対し、ボストン版は構図が完全に定まった後に描かれた、ある種の完成された美しさを備えています。どちらが優れているかという単純な二元論ではなく、画家の内面的な格闘を見るなら山梨版、円熟した詩情を味わうならボストン版という、双方に代えがたい魅力が存在しているのです。

伊藤 翔太

伊藤 翔太

フード&トラベルライター

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。

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