慣性モーメントとは?回転のしにくさとゴルフで曲がらない物理の謎を解明
慣性モーメントとは?回転のしにくさとゴルフで曲がらない物理の謎を解明についての疑問解決ガイドをご紹介します。
物理学における剛体の力学において、物体の運動は大きく「並進運動(まっすぐ進む動き)」と「回転運動(ある軸を中心に回る動き)」の2つに分かれます。並進運動において、物体が動きにくかったり止まりにくかったりする度合いを決めるのは「質量($m$)」です。5kgのダンベルより50kgのバーベルの方が動かしにくいのと同じ直感を、回転の世界に拡張した物理量こそが慣性モーメント(Moment of Inertia:記号 $I$)にほかなりません。
慣性モーメントの国際単位系(SI単位)における単位は「$\mathrm{kg\cdot m^2}$」(キログラム・平方メートル)で表されます。ゴルフクラブのヘッド設計など精密機器の現場では、より扱いやすい「$\mathrm{g\cdot cm^2}$」(グラム・平方センチメートル)が用いられるのが通例です。
では、なぜ慣性モーメントは単なる質量ではなく「回転のしにくさ」を示す決定的な指標になるのでしょうか。最も基本的な質点(大きさのない点質量 $m$)が、回転軸から距離 $r$ 離れた位置を回転しているケースを考えてみます。このときの慣性モーメントの基本公式は次のように定義されます。
$I = m r^2$
ここで着目すべきは、距離 $r$ が「2乗」で効いてくるという数学的・物理的事実です。質量が2倍になれば慣性モーメントは2倍ですが、回転軸からの距離が2倍に離れると、慣性モーメントは4倍に膨れ上がります。重さが同じであっても、外側に重心が偏っている物体ほど圧倒的に回しにくく、一度回ってしまえば今度は急激に止めにくくなります。
この2乗の理由を力学の観点から紐解くと、回転する質点の速さ $v$ が角速度 $\omega$(1秒あたりに回る角度)と回転半径 $r$ の積「$v = r\omega$」で表される点に行き着きます。運動エネルギーの式 $\frac{1}{2}mv^2$ にこれを代入すると「$\frac{1}{2}m(r\omega)^2 = \frac{1}{2}(mr^2)\omega^2$」となり、回転エネルギー $\frac{1}{2}I\omega^2$ の枠組みにおいて、並進の質量 $m$ に相当する係数が必然的に $mr^2$ になるためです。