「桜だと思ったら杏?」杏と桜の決定的な違いと一瞬で見分ける鑑別法
「桜だと思ったら杏?」杏と桜の決定的な違いと一瞬で見分ける鑑別法の重要なポイントについて、専門知識を詳しくお届けします。
植物分類学において、桜も杏もかつては同じバラ科サクラ属(Prunus)に包括されていました(近年のゲノム解析や細分化分類では杏をアンズ属Armeniacaとして分ける見解もあります)。共通の祖先を持ちながら、なぜこれほど細部の形態が分岐したのでしょうか。
その背景には、原産地の気候適応と受粉戦略の歴史があります。杏はもともと中国北部から中央アジアの乾燥・寒冷な山岳地帯が原産とされています。冷涼な早春の冷風に耐えつつ結実を確実にするため、花柄を伸ばさず枝に密着させ、熱損失を抑える構造へと進化したと考えられています。また、ガクの反り返りは開花とともに受粉昆虫を誘引し、効率よく雌しべ・雄しべを露出させるための機能的適応です。
開花時期の比較を見ても、杏は桜(ソメイヨシノ)より約1〜2週間早く満開を迎えます。日本列島の平野部では、梅の見頃が終わる3月中旬頃から咲き始め、桜のシーズンが本格化する前にピークを迎えます。そのため、「3月中旬に満開の桜のような花」を見かけた場合、植物学的には杏、あるいはスモモや早咲き桜を疑うのが自然です。
文化的な観点では、それぞれの花言葉にも差異が現れています。桜の花言葉が「精神美」「優美な女性」であるのに対し、杏の花言葉には「乙女の恥じらい」「不屈の精神」「早すぎた恋」といった言葉が充てられています。まだ寒さの残る早春に、葉が出るよりも先駆けて赤みを帯びた花を咲かせる姿が、恥じらいつつも凛と立つ女性像に重ね合わされたことに由来します。