バンドネオンとは?悪魔の楽器と呼ばれる理由とアコーディオンとの違い
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情熱的なタンゴの象徴であるため、多くの人がバンドネオンをアルゼンチン発祥の楽器だと思い込んでいます。しかし、その歴史は19世紀半ばのドイツに端を発しています。発明者はドイツ・クレーフェルトの楽器商であったハインリヒ・バンド(Heinrich Band)。彼の名(Band)にちなんで「バンドネオン(Bandonion)」と命名され、1847年頃に世に送り出されました。
もともと1820年代にウィーンのシリル・デミアンがアコーディオンの特許を取得し、ケムニッツのカール・フリードリヒ・ウーリヒがドイツ式コンサーティーナを開発していました。ハインリヒ・バンドはコンサーティーナの音域を拡張し、教会の礼拝で使われるパイプオルガンの代用品として開発を進めました。高価なパイプオルガンを購入できない貧しい教会や、屋外の宗教行列で持ち運んで神への賛美歌を伴奏するための「携帯用小型オルガン」こそが、バンドネオン本来の誕生理由だったのです。
敬虔な祈りを捧げるためのドイツ製楽器が、いかにして地球の裏側にあるブエノスアイレスの歓楽街へ流れ着いたのか。19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパから南米への大移民時代が到来します。新天地での成功を夢見て大西洋を渡ったドイツ人移民や船乗りたちが、故郷をしのぶために携えていたバンドネオンが、ブエノスアイレスの港町ボカの酒場へと持ち込まれました。
異郷の地で過酷な現実に直面し、孤独と望郷の念に苛まれる移民たちの哀切が、荒削りな下町文化と衝突して生まれた音楽、それがタンゴでした。バンドネオンの持つ「押し引きによって感情が千々に乱れるような鋭いアクセント」と「すすり泣きのような伸びやかな哀愁」は、タンゴの持つペーソスと奇跡的な融合を果たします。教会のオルガンとして生まれた聖なる楽器は、港町の夜を彩る悪魔のダンス音楽の心臓部として第二の命を得たのです。