なぜ『プロジェクト・ヘイル・メアリー』本は世界を熱狂させるのか?
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物語の幕開けは、見知らぬ宇宙船のベッドの上です。主人公は自らの名前すら覚えていない重度の記憶喪失状態で目覚めます。周囲にはすでに息絶えた2人のクルー。散乱するハイテク機器を前に、彼は少しずつ断片的な記憶を取り戻していきます。
地球の太陽エネルギーを喰らい尽くし、全人類を氷河期による絶滅の危機に陥れている未知の宇宙微生物「アストロファージ」。その脅威を回避する唯一の鍵を探るため、主人公ライランド・グレースは恒星間宇宙船「ヘイル・メアリー号」に乗せられ、片道切符の特攻任務(ヘイル・メアリー・パス)に挑んでいたのです。
本作が並のパニックSFと一線を画すのは、絶望的な状況を科学的知見と論理的思考、そしてユーモアで切り拓く痛快さにあります。さらに物語中盤、同じく自星の滅亡を救うためにやってきた異星のエンジニア「ロッキー」との邂逅によって、物語は壮大なバディドラマへと昇華します。言語も身体構造も全く異なる二者が、数学と物理を共通言語として心を通わせていくプロセスは、知的好奇心と感情の双方を強烈に揺さぶります。