野球のイップスとは?突然投げられなくなる原因と最新の克服法
野球のイップスとは?突然投げられなくなる原因と最新の克服法の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点でまとめました。
「イップス(yips)」という言葉は、元々はゴルフの世界でパッティングの名手だったトミー・アーマーが、突如として手が震えてパターを外すようになった自らの不可解な症状を表現したことに端を発します。それが野球界にも広く浸透し、現在では特に投手や内野手の「送球動作が思い通りにできなくなる現象」の総称として定着しました。
では、なぜ何年も練習を積み重ねてきた選手が、突如として投げられなくなるのでしょうか。その根底には、野球のイップスの原因となる「脳の無意識システムのバグ」が存在します。投球という動作は本来、大脳基底核や小脳が司る「自動化された無意識の運動プログラム」によって遂行されます。いちいち「肘を90度に曲げて、手首をしならせて、人差し指から離す」などと意識せずとも、狙った場所へ投げられるのが熟練者の身体です。
ところが、「絶対に暴投してはならない」「ここでミスをしたらレギュラーを外される」「監督から激怒される」といった強烈な心理的負荷や恐怖心が引き金となり、大脳皮質の前頭葉が過剰に覚醒します。すると、本来は無意識に任せるべき自動運転システムに強烈な「意識的な介入」が入り込み、ブレーキ筋とアクセル筋が同時に収縮してしまうのです。これが、ボールが手から離れなくなったり、叩きつけるような投げ方になったりする生理学的メカニズムです。
さらに学術的な観点では、長年にわたり同じ動作を極限まで繰り返すアスリートに見られる神経疾患「局所性ジストニア(職業性ジストニア)」との関連性も強く指摘されています。脳内の感覚運動マップが混線し、指先を曲げる神経と伸ばす神経が同時に指令を出してしまう状態です。つまり、イップスは決して「心の弱さ」などではなく、極限まで練習を重ねてきた熱心な選手ほど陥りやすい、脳と神経系のオーバーヒート現象なのです。