神経原性ショックでなぜ徐脈に?脊髄ショックとの違いと救急治療の真相

神経原性ショックでなぜ徐脈に?脊髄ショックとの違いと救急治療の真相の真相について、最新情報を取りまとめてご紹介します。

ショックの定義とは、全身の組織灌流が減少し、細胞が必要とする酸素や栄養素を十分に届けられなくなった急性循環不全の状態を指します。出血性ショックなどでは圧受容器反射が作動し、交感神経が興奮して心拍数を跳ね上げることで心拍出量を維持しようと試みます。それに対し、神経原性ショックの原因と病態生理において決定的なのは、中枢からの交感神経シグナルそのものが物理的・機能的に途絶してしまう点にあります。

神経原性ショックで徐脈になる理由は、心臓を支配する自律神経の解剖学的走行を紐解くことで鮮明に理解できます。心臓の拍動を促進する交感神経心臓枝(促進中枢)は、第1胸髄から第4胸髄(Th1〜Th4)の側角から起始しています。この高位よりも上位、すなわち頸髄や上位胸髄に深刻な損傷が加わると、脳幹の延髄心臓血管中枢から下行する交感神経インパルスが完全にブロックされます。

一方で、心拍数を減速させる迷走神経(副交感神経)は脳神経(第X脳神経)であるため、脊髄を経由せず頭蓋骨から直接胸腔内へと走行しています。結果として、交感神経の緊張が消失した心臓には迷走神経の抑制シグナルだけが一方的に伝達されることになり、著明な徐脈(多くは50回/分未満、時に30回/分台)が引き起こされます。

同時に進行するのが神経原性ショックの血圧低下メカニズムです。交感神経は全身の血管平滑筋に適度な緊張(トーヌス)を与えて血管抵抗を維持していますが、これが消失すると全身の細動脈および容量血管(静脈)が一気に拡張します。これにより、血液が末梢の拡張した血管床にトラップされ、心臓へと戻る静脈還流量(前負荷)が激減。結果として心拍出量が低下し、深刻な低血圧に陥る構造です。

また、初期には末梢血管が拡張しているため、皮膚が蒼白で冷たく湿潤になる通常のショックとは異なり、四肢が温かく乾燥してピンク色を保つ神経原性ショック特有の「ウォームショック」の様相を呈します。しかし、これは末梢に熱が逃げているサインでもあり、体温調節機能を喪失して急速な低体温(変温状態)へと転落していく危険なシグナルに他なりません。

池田 達也

池田 達也

マネー&キャリアエディター

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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