粘液水腫性昏睡の初期症状と致死率|認知症と誤認される危機の正体
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救急搬送された家族への聞き取り調査で最も頻出するのは、「数ヶ月前から少し元気がなく、単に年を取って認知症が進んだのだと思っていた」という後悔の言葉です。甲状腺ホルモンは全身の細胞の代謝速度を決定するアクセルの役割を果たしているため、これが不足すると精神活動も身体機能もスローモーションのように鈍化します。
見逃されやすい粘液水腫性昏睡の初期症状として、まず現れるのが思考力低下、動作の緩慢、重度の便秘、嗄声(声のかすれ)、皮膚の乾燥です。さらに特徴的なのが、指で押しても痕が残らない「非圧痕性浮腫(粘液水腫)」であり、特に顔面やまぶた、口唇が腫れぼったい特異な顔貌を呈します。
ここから病勢が一気に危険水域へ突入する兆候が、粘液水腫に特有の低体温と意識障害の進行です。体温調節中枢の麻痺と基礎代謝の停止により、深部体温が35度以下、重症例では30度近くまで急降下します。一般的な低体温症であれば激しいふるえ(シバリング)によって熱を産生しようとしますが、本症ではシバリングすら起こりません。呼吸筋の筋力低下と中枢性呼吸抑制により二酸化炭素が体内に蓄積し(CO2ナルコーシス)、徐脈、低血圧が重なることで、患者は呼びかけにも応じない昏睡状態へと陥ります。