鬼平犯科帳の軍鶏鍋「五鉄」は実在する?モデルの真相と再現レシピ
鬼平犯科帳の軍鶏鍋「五鉄」は実在する?モデルの真相と再現レシピの真相や最新動向に迫る! 専門的な視点で紐解きます。
結論から明かせば、江戸時代に「本所二ツ目(現在の東京都墨田区両国・緑周辺)」に「五鉄」という屋号の軍鶏鍋屋が実在した公式記録はありません。この店は、原作者である池波正太郎が江戸の町割や当時の風俗資料を緻密に調査したうえで生み出した創作の舞台です。
しかし、全くの絵空事だったわけではありません。江戸後期の地誌『江戸名所図会』や当時の町触れ(法令)を紐解くと、本所二ツ目から両国橋・竪川界隈にかけては、軽輩の武士、町人、荷運びの職人、そして無頼の徒が昼夜を問わず行き交う一大歓楽街でした。そこには実際に「軍鶏なべ」「ももんじ屋(獣肉料理)」を掲げる煮売屋が数多く軒を連ねていた事実が記録されています。
池波正太郎自身、数々の食随筆や回顧録の中で「小説に登場させる店は、自分が通い詰めて舌で覚えた店の記憶と、江戸の古地図を重ね合わせて構築している」と明言しています。つまり五鉄とは、池波が愛した複数の名店の遺伝子を抽出し、最も市井の息遣いが色濃い本所二ツ目というトポス(場所)へ移植した「リアリズムの結晶」なのです。