なぜハツは蹴りたくなったのか?『蹴りたい背中』結末と心理を徹底考察
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物語のクライマックスは、学校行事である陸上競技大会(オリパラ)のスタンドで訪れます。
雨が降りしきる競技場の中、クラスメイトたちがメガホンを打ち鳴らして盛り上がる中、ハツとなぜにな川は最上段のベンチでポツンと離れて座っていました。にな川は、雑誌の取材でオチャンが近くの競技場に来ているという噂を聞きつけ、上の空で双眼鏡を覗き込み、オチャンの姿を必死に追っています。
目の前に広がる雨雲、熱狂する生徒たち、そして自分を完全に無視して遠くの幻影を追い続けるにな川。ハツの中で渦巻いていた孤独、惨めさ、そして抑えきれない衝動が臨界点に達します。
身を乗り出して遠くを見つめるにな川の無防備な背中。ハツは足を振り上げ、全身の力を込めてその背中を蹴り飛ばします。
前のめりに倒れ込み、泥だらけになったにな川は、驚愕と怒りの表情でハツを振り返ります。ハツは痛みにうずくまるにな川を見下ろしながら、走って逃げ出します。しかし、その逃走の最中、ハツの胸に去来したのは罪悪感ではなく、かつてないほどの爽快感と確かな生の実感でした。
物語のラスト、ハツは心の中でこう呟きます。自分はこれからもクラスの輪には入れず、にな川と恋人同士になることもない。それでも、蹴られた痛みを通じて、にな川の世界に「自分」という存在が決定的に侵入した事実だけは消えない――。
予定調和の恋愛感情や友情による結びつきを徹底して拒絶し、「痛みによる他者認識」という形で幕を閉じるこの結末は、青春小説の既成概念を鮮やかに打ち砕く文学的達成となりました。