国立競技場のキャパは何人?ライブ収容人数と座席の真相を徹底解剖
国立競技場のキャパは何人?ライブ収容人数と座席の真相を徹底解剖の重要なポイントについて、分かりやすい解説を基に徹底解説します。
スタジアム建設の歴史を振り返ると、メディアやSNSで度々浮上するのが「当初は8万人規模と聞いていたが、なぜ約6万8,000人にとどまったのか」「総工費約1,569億円もかけたのに、なぜ空調設備が完備されていないのか」という厳しい指摘です。
発端となったのは、2012年の国際デザインコンクールで決定したザハ・ハディド設計事務所の初期案でした。この原案では、キールアーチ構造を用いた未来的デザインにより、開閉式屋根と8万人規模の収容人員が華々しく掲げられていました。しかし、資材価格の高騰や巨大建築による周辺景観(明治神宮外苑の風致地区)への影響から総工費が3,000億円超に跳ね上がることが判明。2015年7月、当時の政権によって事業は完全白紙撤回されました。
仕切り直しのコンペで採用されたのが、建築家・隈研吾氏と大成建設・梓設計による現在の「杜のスタジアム」案です。この再設計にあたり、コスト削減策の一環として「常設8万人」は断念され、将来のサッカーワールドカップ招致等を見据えた「仮設スタンドによる8万人拡張の余地」を残しつつ、通常時約6万8,000人の常設規模へと現実的なダウンサイジングが行われました。
また、ネット上で「観客置き去り」としばしば批判される空調設備が設置されていない理由についても、単なる手抜きや予算カットではありません。国立競技場は、密閉された東京ドームのような「完全屋内施設」ではなく、屋根中央部に大開口部を持つ半屋外空間です。完全な冷暖房を機能させるには空間全体を密閉する必要があり、構造的にエアロゾルや熱排気が滞留する巨大な温室を生み出すリスクを孕んでいました。
そこで採用されたのが、伝統的な日本建築の軒庇(のきびさし)をモチーフにした「風の大庇(おおひさし)」によるパッシブ換気技術です。上空の卓越風をスタジアム内に引き込み、グラウンド面の熱気を上空のセンター開口部へ抜く自然換気システムを採用。さらにスタンド各所には、微小な気流を送り出す「気流創出ファン」やミスト冷却設備、ベンチへのスポット送風装置がレイアウトされています。「巨大なエアコンを回す」のではなく、「スタジアム自体が一つの巨大な呼吸器官として熱を逃がす」思想で造られている点が、現代の環境建築としての真実です。