無期懲役と終身刑の違いとは?10年出所の嘘と知られざる獄死の現実
無期懲役と終身刑の違いとは?10年出所の嘘と知られざる獄死の現実に関するポイントを丁寧にまとめました。詳細な解説をチェックしましょう。
日常会話や海外のニュースでは混同されがちな「無期懲役」と「終身刑」ですが、法学上および制度上、両者には明確な境界線が引かれています。
「終身刑」とは、文字通り受刑者が死亡するまで身柄を拘束し続ける刑罰の総称です。海外の法制度では、恩赦などを除いて生涯絶対に仮釈放が認められない「絶対的終身刑(Life imprisonment without parole)」と、一定期間の服役後に仮釈放の審査を受けられる「相対的終身刑(Life imprisonment with parole)」の2種類に大別されます。これに対して、日本の現行刑法が規定している無期刑は、構造としては後者の「相対的終身刑」に近い性質を持っています。
では、なぜ日本には諸外国のような「終身刑」という名称の独立した刑罰、とりわけ仮釈放を一切排除した「絶対的終身刑」が存在しないのでしょうか。その背景には、明治期以来の日本近代刑法の根幹をなす思想と、複雑な刑事政策的理由が存在します。
第一の理由は、「改善更生の可能性を完全に否定しない」という行刑思想です。日本の刑法体系は、罪を償わせる「応報」だけでなく、反省を促し社会復帰させる「特別予防(更生)」を重視して設計されてきました。生涯にわたって社会復帰の希望を1ミリも与えない刑罰は、受刑者を絶望に突き落とし、人間性を根底から否定する過酷な措置になりかねないという憲法・人権論的な懸念が根底にあります。
第二の理由は、「刑務所内の規律維持」という極めて実務的な現場の要請です。刑務所の保安において、受刑者の「真面目に服役すればいつか出られるかもしれない」という希望は、反抗や暴動を抑止する最大の防波堤として機能します。仮釈放の望みが完全に断たれた受刑者が自暴自棄になった場合、刑務官への暴力や脱走を抑止する手段が極めて乏しくなるという現場サイドの懸念が、絶対的終身刑の導入に慎重な姿勢を生んできました。
さらに、法改正論議においては「死刑存廃問題」との強い連動性があります。法曹関係者の間では、仮釈放のない重無期刑導入の議論と経緯が長年重ねられてきたものの、「死刑を廃止するための代替刑として導入すべき」とする立場と、「死刑を維持したまま重無期刑を作れば、量刑のバランスが崩れ有期刑受刑者との不平等を招く」とする慎重論が真っ向から対立し、法制化が見送られ続けてきた経緯があります。