メロスはなぜ激怒したのか?教科書の名作に隠された驚きの背景と真相
メロスはなぜ激怒したのか?教科書の名作に隠された驚きの背景と真相について分かりやすく解説いたします。最新の情報をチェックしてください。
メロスを怒髪天を衝く怒りへと駆り立てた決定打、それこそがディオニス王による「狂気の人殺し」でした。老爺は震え声で、街を支配する絶望的な真実を語ります。「王様は、人を殺します」。最初は「悪心を抱いている臣下を処分した」という建前でしたが、王の凶行はとどまるところを知りませんでした。
ディオニス王が手を下したのは、遠い臣下だけではありませんでした。贅沢な暮らしを警戒するあまり、周囲の人間すべてが自分を裏切るのではないかという重度のパラノイア(偏執病)に憑りつかれていたのです。殺害されたリストには、次のような身内や関係者が並びます。
まず皇后を処刑し、世継ぎとなるべき我が子を殺害。さらに実の妹、妹の夫、甥にあたる妹の子供までも容赦なく手にかけていきました。それだけに留まらず、王宮に仕える重臣や女官、果ては街中で少しでも不満や疑問の声を漏らした無辜の民衆に至るまで、毎日2人、3人と磔(はりつけ)の刑に処していたのです。
「人の心は信じられない。私を裏切る前に殺すのだ」という王の歪んだ自己防衛は、シラクスの市から笑顔と活気を完全に奪い去りました。平和に羊を追って暮らしてきたメロスにとって、無抵抗な人々が権力者の妄想によって理不尽に殺されていく現実は、到底受け入れられるものではありませんでした。「呆れた王だ。生かして置けぬ」――政治的な計算も、自らの安全も一切顧みない純粋すぎる正義感が爆発した瞬間でした。