黒死病とは何か?欧州3割を奪ったペストの猛威と現代に残る痕跡
黒死病とは何か?欧州3割を奪ったペストの猛威と現代に残る痕跡について見逃せない 注意点を分かりやすい構成で解説いたします。
歴史の教科書やドキュメンタリーで目にする「黒死病」と「ペスト」という2つの言葉。この2つに病理学的な違いはありません。黒死病とは、ペスト菌(Yersinia pestis)を原因とする感染症「ペスト」が、14世紀の中世ヨーロッパで引き起こした大パンデミックを指す歴史的通称です。
医学用語としての正式名称が「ペスト」であるのに対し、「黒死病(英語:Black Death / ラテン語:Mors atra)」という呼称が定着した最大の理由は、その凄惨な黒死病の症状である皮膚壊死にあります。ペスト菌が血流に乗って全身に広がる敗血症ペストを引き起こすと、内出血や播種性血管内凝固症候群(DIC)によって末梢組織への血流が途絶します。その結果、手足の指先や全身の皮膚組織が急速に壊死し、赤黒い斑点から漆黒へと変色した状態で絶命することから、人々はこの病を恐怖を込めて「黒死病」と呼ぶようになりました。
1347年、中央アジアからシルクロードを経由してクリミア半島のカッファ(現フェオドシヤ)を包囲していたモンゴル軍陣営で発生したペストは、ジェノヴァ商人の交易船を通じてシチリア島のメッシーナ港へと上陸しました。当時のヨーロッパは栄養状態の悪化や過密な都市環境、劣悪な衛生状態が重なっており、上陸からわずか数年で地中海沿岸から北欧、ロシアにまで感染が拡大。推計2500万人から5000万人以上、当時の中世ヨーロッパの人口の約3分の1から半数が失われるという壊滅的な惨禍をもたらしました。