交響詩モルダウ徹底解剖!名曲に秘められたスメタナの壮絶人生
交響詩モルダウ徹底解剖!名曲に秘められたスメタナの壮絶人生にまつわる最新トピックを分かりやすく発信ます。
『モルダウ』を巡っては、愛好家の間でもしばしば議論となる歴史的背景や、インターネット上で広まるいくつかの誤解が存在します。専門的見地からその真相を整理します。
1. 「モルダウ」か「ヴルタヴァ」か?呼称に込められた民族の尊厳
日本国内では長らくドイツ語表記の「モルダウ(Moldau)」が一般化していましたが、本国チェコでは一貫してヴルタヴァ(Vltava)と呼ばれます。オーストリア・ハプスブルク帝国の支配から脱却しようとしたスメタナ自身の民族的意図を尊重し、近年では日本のコンサートプログラムやCD表記でも「交響詩《ヴルタヴァ》」と表記されるケースが急増しています。ドイツ語名が世界的に広まったのは、当時プラハで初版楽譜を出版したブライトコプフ社などの国際流通の影響によるものです。
2. 有名な旋律はチェコ民謡ではなく「ヨーロッパの放浪歌」?
誰もが知るあの哀愁漂う主旋律について、「チェコの伝統的民謡をそのまま引用した」と誤解されることが少なくありません。しかし音楽史研究によると、このメロディの源流は16世紀イタリアの舞曲『ラ・マントヴァーナ(La Mantovana)』に遡ります。この旋律はヨーロッパ全土に広まり、スウェーデン民謡、ルーマニア民謡、さらにはイスラエル国歌『ハティクヴァ』の原曲にもなった国際的な広がりを持つ旋律です。スメタナはこの広く愛されていた親しみやすい旋律を、自らの洗練された感性でボヘミアの魂へと昇華させたのです。