犬の耳マラセチアが治らない理由とは?黒い耳垢の正体と最新治療法
犬の耳マラセチアが治らない理由とは?黒い耳垢の正体と最新治療法に関する主要な事実を分かりやすくまとめました。最新データをチェックしましょう。
多くの飼い主が「良かれと思って」実践し、結果として病状を劇的に悪化させている典型例が、市販の綿棒を使った耳掃除です。獣医臨床の現場において、綿棒耳掃除の悪化リスクと危険性は極めて高く認知されています。犬の耳道は人間と異なり、垂直耳道から水平耳道へと「L字型」に急角度で曲がっています。外から綿棒を差し込むと、手前にある黒い耳垢をかき出すどころか、L字の屈曲部や水平耳道の奥へとピストンのように耳垢を押し込んでしまいます。
さらに、炎症を起こして浮腫状になったデリケートな耳道粘膜を綿棒の硬い芯で擦ることで、目に見えない微細な剥離や潰瘍が生じます。傷ついた粘膜からは浸出液が滲み出し、マラセチアだけでなく緑膿菌やブドウ球菌といった細菌の格好の温床となり、単純なマラセチア外耳炎から重篤な混合感染症へと悪化させてしまうのです。日本獣医皮膚科学会のガイドラインでも、飼い主による家庭での綿棒使用は明確に非推奨とされています。
もう一つの頻出する不安が、犬のマラセチアは人間にうつるのか真相をめぐる懸念です。結論から述べると、健康な成人の人間の皮膚に犬のマラセチア(M. pachydermatis)が感染して皮膚病を引き起こすリスクは極めて稀です。人間の皮膚に主に常在しているのは別種のマラセチア(M. globosaやM. restrictaなど)であり、菌種としての生態的ニッチが異なります。
ただし、例外的なリスクファクターは存在します。集中治療室(ICU)に入院中の未熟児や中心静脈カテーテルを留置している重度の免疫不全患者において、犬を飼育している医療従事者の手指を介してM. pachydermatisが血流感染を引き起こした症例が過去に海外の医学誌で報告されています。健康な家族であれば過度な恐怖を抱く必要はありませんが、愛犬の耳を触った後は石鹸による手洗いを徹底することが衛生管理上の鉄則です。