ワーキングプアは自己責任なのか?真面目に働く人が困窮する構造の罠

ワーキングプアは自己責任なのか?真面目に働く人が困窮する構造の罠についての真相をご紹介します。

ネット上の掲示板やSNSでは、生活困窮の話題が出るたびに冷徹な言葉が飛び交います。「勉強しなかったツケ」「借金や浪費をした結果」「選ばなければ人手不足の介護や運送がある」といった自己責任論です。しかし、困窮者支援の最前線に立つ相談員や民間シェルターの現場を取材すると、ネットで語られるステレオタイプとは全く異なる現実が浮き彫りになります。

都内の支援窓口を訪れた40代女性の手記には、次のような切実な証言が記されています。

「大学を卒業後、事務職として真面目に10年以上勤めていましたが、親の突然の脳梗塞で介護離職を余儀なくされました。デイサービスの費用を工面しながら近所のスーパーでレジ打ちのパートを掛け持ちし、睡眠時間を削って働いていますが、親の年金と私の月収12万円では毎月赤字です。誰にも迷惑をかけず働いているつもりなのに、ネットで『貧困は自己責任』と叩かれるのを見るたび、自分が生きていること自体を否定された気持ちになります」

現場の実態調査によると、困窮者の多くは「散財」や「怠惰」ではなく、親の介護、自身の病気、会社の突然の倒産、あるいは育児と仕事の両立困難といった偶発的かつ不可抗力なライフイベントを契機に転落しています。さらに深刻なのは、家庭環境や教育格差が子へ引き継がれる「貧困の連鎖」です。給付型奨学金の枠が狭かった時代に育ち、親の経済力不足から進学やスキル習得を諦めざるを得なかった層に対して、後から「自己責任」と断罪するのは構造の暴論と言わざるを得ません。

ネット上で自己責任論がこれほど支持を集める背景には、心理学で言う「公正世界仮説(世界は安全で公正であり、悪いことは悪いことをした人にしか起きないと思い込みたい心理)」が働いています。「貧困に陥ったのはあいつに落ち度があるからだ」と他者を攻撃することで、「自分は真面目に生きているから貧困には落ちない」という安心感を得ようとする無意識の防衛本能が、自己責任論の拡散を後押ししているのです。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。

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