北野坂にしむら珈琲店「会員制」の真相と洋館の魅力|限定モーニング解剖

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北野坂にしむら珈琲店が産声を上げたのは、昭和の高度経済成長期を経た1974年(昭和49年)のことでした。創業者の川口松子氏が抱いていたのは、「本物の珈琲と最高峰の調度品を揃え、大人の社交場として心静かに過ごせる理想のサロンを作りたい」という純粋な情熱でした。当時としては極めて異例であった「日本初の会員制喫茶店」という形態を採用し、入会を認められた限られた常連客だけに特別に合鍵や会員証が手渡される完全なクローズド空間として運営が始まったのです。

店内の棚には各界の名士たちの専用カップが並び、クラシック音楽が流れる中で知的な対話が交わされる特別な場所でした。この「特別な聖域」という格式の高さが、今なお北野坂の地に漂う独特の気品の源泉となっています。

長年守られ続けたその門戸が劇的に開かれたのは、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災でした。神戸の街が壊滅的な被害を受け、多くの家屋や店舗が倒壊・焼失する中、強固な基礎と赤煉瓦で建てられた北野坂の洋館は奇跡的に大きな倒壊を免れました。

当時の記録や関係者の証言によると、傷つき打ちひしがれた神戸の街と市民の姿を目の当たりにした創業者は、「会員制という垣根を越え、温かい珈琲一杯で傷ついたすべての人々の心を励まし、癒やしの場を提供することこそが喫茶店の本来の使命である」と深く決断したと伝えられています。震災復興の歩みとともに一般開放された北野坂にしむら珈琲店は、神戸の不屈の復興精神と温かなもてなしの心を象徴するランドマークとして、新たな歴史を歩み始めました。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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