八王子城跡・御主殿の滝の真実|血塗られた落城劇と怪談の深層
八王子城跡・御主殿の滝の真実|血塗られた落城劇と怪談の深層の見逃せないポイントを徹底的にカバーしました。
落城の苛烈さを象徴するエピソードとして語り継がれてきたのが、御主殿の滝血の川伝説です。数百人とも言われる人々が一斉に自刃して滝壺へ身を投げた結果、滝から流れ出る城山川(しらやまがわ)の水は三日三晩にわたって鮮血で真っ赤に染まり続けたと伝えられています。
この凄惨な光景は下流の集落に計り知れない心理的衝撃を与えました。城山川の水は山裾に暮らす農民たちの生活用水であり、水田を潤す命の水でもありました。川下が赤く染まったことで、住民たちは川の水を使うことができなくなり、井戸水や湧水で炊いたご飯すらも血の赤さを連想して喉を通らなかったといいます。
ここから生まれたのが、地域独特の風習である御主殿の滝あずき飯の由来です。当時の農民たちは、無残な最期を遂げた北条方の死者たちの霊を慰めるため、米に小豆を混ぜて炊いた「あずき飯」を川に流し、供養を捧げました。祝い事の象徴である赤飯とは真逆の動機であり、血に染まった犠牲者たちの魂を鎮めるための切実な鎮魂儀礼でした。八王子市内の一部地域では、落城の日である6月23日(新暦7月下旬)になると赤飯ではなくあずき飯を炊いて仏前に供える習慣が、昭和から平成の時代に至るまで脈々と受け継がれてきました。