伊東歌詞太郎の『メランコリック』が心を揺さぶり続ける理由
伊東歌詞太郎の『メランコリック』が心を揺さぶり続ける理由の全貌を丁寧に掘り下げてご紹介します。
『メランコリック』は、ボカロPのJunkyが2010年4月に動画共有サイトへ投稿した、鏡音リンをボーカルに迎えたアップテンポなガールズロックポップです。キャッチーなメロディラインと、「全然つかめないきみのこと」「恋の病にかかっちゃって」といった素直になれない恋心を描いたリリックが爆発的な支持を集め、VOCALOID殿堂入り・伝説入りを果たしました。
この楽曲に新たな息吹を吹き込んだのが、2012年7月に投稿された伊東歌詞太郎による「歌ってみた」動画です。当時、バンド活動を経てネット発のボーカリストとして頭角を現していた彼は、アコースティックギターの爽快な響きとバンドサウンドの疾走感を融合させたトラックの上で、原曲のキュートさを真っ向から「青年の情熱と葛藤」へと塗り替えました。
女性視点で書かれた歌詞を男性ボーカルがカバーする場合、一人称や言い回しを改変するケースも少なくありません。しかし、伊東歌詞太郎は歌詞を一言一句変えることなく、自身の声色とダイナミクスのみで「プライドが高く素直になれない少年の不器用な恋煩い」として見事に成立させました。この解釈の深さと表現の説得力こそが、ボカロカバー史に残る名演としてリスナーを惹きつけ続ける第一の要因です。