コオロギの鳴き声に隠された真実!オスだけが奏でる理由と気温の計算式
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コオロギの音色は喉から発せられているわけではありません。彼らには人間のような声帯はなく、左右の前翅(まえまえばね)を激しく擦り合わせる摩擦発音という物理的な仕組みによって音を発生させています。
右の前翅の裏側には「やすり爪(摩擦爪)」と呼ばれる数十から数百の細かな突起が並んだ脈が存在し、左の前翅の縁にある硬い「摩擦片」を高速でこすり合わせます。このとき生じた微小な振動が、翅の膜にある「鏡膜(セル)」と呼ばれる太鼓の膜のような薄い領域で増幅され、共鳴箱の役割を果たすことで、あの透き通った大音量を生み出しています。
ここで多くの人が疑問を抱くのが「メスも同じように鳴くのか」という点です。結論から言えば、鳴くのはオスだけであり、メスが鳴くことは構造上あり得ません。メスの翅にはやすり状の脈も鏡膜も存在せず、完全に平滑な形状を保っています。また、成虫のメスのお尻には産卵管と呼ばれる細長い槍状の器官が伸びているため、外見上もオスと容易に見分けることが可能です。
オスがエネルギーを削ってまで翅を擦り合わせる背景には、種の保存をかけた明確な3つの目的が存在します。
1つ目は、遠くにいるメスを呼び寄せるための「誘引鳴き(ひとり鳴き)」です。夕暮れ時に一定のリズムで長く鳴き続けるのがこれに該当します。2つ目は、近づいてきたメスに対する「求愛鳴き」で、警戒心を解くためにトーンを落とした低く穏やかなテンポへと変化します。そして3つ目が、同種のオス同士が鉢合わせた際に威嚇し合う「闘争鳴き」です。短く鋭利な「キキッ!」「シッ!」という威嚇音を連打し、互いの翅や触角を激しく震わせながら縄張りを争います。