由紀さおり『手紙』歌詞の意味と誕生秘話|1970年大ヒットの真相
由紀さおり『手紙』歌詞の意味と誕生秘話|1970年大ヒットの真相に関する深掘り解説を丁寧に解説いたします。
本作の誕生には、制作陣の並々ならぬ執念とプレッシャーがありました。1969年、言葉を排した「ルー・ルールー」のスキャットで日本中を席巻した『夜明けのスキャット』の大成功は、由紀さおりに大きな名声をもたらした反面、「言葉を持たない企画モノの歌手」として見られるリスクを孕んでいました。
当時の制作チームが掲げた命題は、「由紀さおりの澄み切った美声に、誰もが心を揺さぶられる強い言葉を乗せること」でした。そこで白羽の矢が立ったのが、当時ポップス界の最先端を走っていた作詞家の安井かずみと、壮大なオーケストレーションと哀愁あるメロディ作りに定評のあった作曲家・宮川泰です。
作曲を手掛けた宮川泰は、クラシック音楽の緻密なコード進行と、日本人の琴線に触れるマイナー調の歌謡メロディを融合させました。イントロで流れる物悲しいピアノの連打と、サビに向かって徐々に感情を高揚させていくストリングスのアレンジは、まさに宮川サウンドの真骨頂です。由紀さおり自身も後年の回顧録やインタビューにおいて、「スキャットの次に出す曲として、言葉を一言ひとこと大切に伝える覚悟でレコーディングに臨んだ」と語っており、制作陣と歌手の気迫が見事に結実した瞬間でした。