アルフレッド・ジャーは何者?ユビュ王とパタフィジックスの真相を追う
アルフレッド・ジャーは何者?ユビュ王とパタフィジックスの真相を追うとは一体何なのか? 専門的な分析を整理してお届けします。
彼の名を世界芸術史に刻みつけた決定打が、1896年12月10日、パリのオーヴル座で幕を開けた戯曲『ユビュ王(Ubu Roi)』の伝説的初演です。開演直後、巨大な洋ナシ型の腹部を揺らしながら舞台に現れた主人公ユビュが、最初の第一声として放った単語は「Merdre!(メルドル/くそったれ!)」でした。
フランス語の卑語「Merde」に「r」を一文字ねじ込んだこの汚名高い台詞が響いた瞬間、劇場内は蜂の巣をつついたような大騒乱に陥りました。ブルジョワ層の観客は激怒して罵声を浴びせ、一方で前衛詩人ステファヌ・マラルメや若きアヴァンギャルド派は熱狂的な拍手を送るなど、客席のあちこちで掴み合いの殴り合いが勃発。劇は実に15分間にもわたって中断を余儀なくされました。
この事件は単なるスキャンダルではありませんでした。古典劇の優雅な形式美と平穏な秩序を暴力的に解体した『ユビュ王』は、のちにトリスタン・ツァラらの「ダダイズム」、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム」、さらにはサミュエル・ベケットやウジェーヌ・イヨネスコが確立する「不条理演劇」の揺籃(ようらん)となったのです。