二・二六事件の悲劇、渡辺錠太郎自宅に残る殺害現場の未公開資料
二・二六事件の悲劇、渡辺錠太郎自宅に残る殺害現場の未公開資料にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。
この惨劇を語る上で欠かすことができないのが、当時わずか9歳であった渡辺和子の存在である。後に修道女となり、教育者・著述家として多くの人々に思索の糧を与えた彼女は、あの死線の中で父・渡辺錠太郎の最期を間近で目撃した唯一の遺族であった。
反乱軍の兵士が寝室になだれ込んだ際、父は幼い和子を押し入れへと押し込み、自らはその身を盾にして銃弾を浴びた。目の前で繰り広げられた猛烈な銃撃と、血の海に倒れる父の姿。和子は後年の回想で、弾丸が飛び交う殺伐とした部屋の光景と、死の直前まで娘の身を案じ続けた父親の眼差しを鮮明に語っている。トラウマとなりかねない凄惨な記憶を抱えながらも、彼女が終生唱え続けた精神的境地は、あの悲惨な歴史の現場から紡ぎ出された許しと平和への祈りそのものであった。