タブロイド紙とは?一般紙との違いやサイズの謎・報道の歴史を徹底解明

タブロイド紙とは?一般紙との違いやサイズの謎・報道の歴史を徹底解明に関する基本知識を初心者にも親しみやすくまとめました。要点を確実におさえることができます。

「タブロイド」という単語のルーツを辿ると、意外にも製薬業界に突き当たります。

1884年、イギリスの製薬会社バローズ・ウェルカム(現グラクソ・スミスクラインの母体の一つ)が、粉末や液体の薬品をギュッと固めて飲みやすくした「圧縮錠剤」を開発し、これを『Tabloid(タブロイド)』という商標で登録しました。錠剤のタブロイドは世界的な大ヒットとなり、「大きなものを凝縮して飲みやすくしたもの」という比喩表現として英語圏で日常的に使われるようになります。

この比喩をメディア界に持ち込んだのが、20世紀初頭の新聞界の寵児たちでした。1896年に創刊された英『デイリー・メール』や、米国の『ニューヨーク・デイリー・ニューズ』が、「忙しい労働者階級のために、難解で長いニュースを錠剤のようにギュッと圧縮して提供する」というコンセプトを掲げ、小さな判型を採用したのです。

熾烈な部数競争と「黄色いジャーナリズム」の融合

やがてタブロイド各紙は、駅や街頭での直売シェアを競い合う中で、読者の情動に訴えかける紙面作りを激化させていきました。

とりわけイギリスにおける大衆紙(Red Topsと呼ばれる題字が赤いタブロイド紙)の過激さは世界的に突出しています。『ザ・サン(The Sun)』や『デイリー・ミラー(Daily Mirror)』は、王室のスキャンダル、大物政治家の不倫、セレブリティの私生活を暴くパパラッチ報道を主武器として何百・何千万部という発行部数を記録しました。関係者の私生活に盗聴器を仕掛けたり、買収工作によって内部告発を暴き立てるなど、過剰な取材手法は時に大きな社会問題へと発展しています。

象徴的だったのが、2011年に発覚したルパート・マードック傘下のタブロイド紙『ニューズ・オブ・ザ・ワールド』による大規模な電話盗聴事件です。事件の被害者や戦死者の遺族の携帯電話まで盗聴していた事実が明るみに出て同紙は廃刊に追い込まれ、英政界やメディア界を巻き込む大スキャンダルとなりました。

こうしたイギリスを中心とする大衆紙の暴走の歴史によって、「タブロイド」という言葉には「事実を歪曲してでもセンセーショナルに書き立てる低俗なスキャンダル報道」という強固なネガティブイメージが世界的に定着していったのです。

欧米における「コンパクト化」という逆転現象

一方で、判型としてのタブロイドには別の歴史的側面もあります。2000年代以降、英国の格式高い高級紙である『タイムズ(The Times)』や『インディペンデント(The Independent)』が、読者のライフスタイルの変化(通勤時に読みづらい大型紙面の敬遠)に対応するため、サイズをブロードシート判からタブロイド判へと縮小しました。

この際、高級紙側はゴシップ紙との混同を嫌い、「コンパクト判(Compact size)」と呼称しました。判型はタブロイドと同じでありながら、中身は極めて格調高い硬派な報道を維持したのです。この事実からも、「タブロイド=低俗」という等式は紙のサイズそのものが持つ本質ではなく、そこに何を刷るかというコンテンツ戦略に依存していることが証明されています。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest