童謡『里の秋』に隠された戦争の傷跡|3番の歌詞と復員船の真実を追う
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『里の秋』の歌詞を改めて精読すると、1番から3番にかけて視点が劇的に変化する構造に気付かされます。1番では「静かな静かな 里の秋」「栗の実煮てます 囲炉裏ばた」と、日本の山里における静謐な家庭の風景が描かれます。2番では「明るい明るい 星の空」「父さんのあの笑顔」と、出征した父親への追慕へと意識が広がり、そして問題の3番へと繋がります。
3番の冒頭で歌われるのは、「さよならさよなら 椰子の島 お船にゆられて 帰られる」というフレーズです。日本の農村風景とは到底結びつかない「椰子の島」とは、フィリピン、ニューギニア、ソロモン諸島など、太平洋戦争において激戦地となった南方諸島を指しています。当時の日本兵にとって、南方戦線は飢餓と熱帯病(マラリア等)が蔓延し、生還率が極めて低い絶望的な戦場でした。
そして「お船」とは、生き残った兵士たちを祖国へと運ぶ「復員船(ふくいんせん)」のことです。終戦を迎えたものの、通信網が寸断されていた当時、外地に取り残された父親が生きて帰れるかどうかは誰にもわかりませんでした。囲炉裏の火を見つめながら、「どうか父さんが無事で復員船に乗っていますように」と手を合わせる母と子の姿――それこそが、この歌に込められた痛切な核(コア)なのです。