石村萬盛堂の買収劇と現在|ホワイトデー発祥の老舗が遂げた再生の真相
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石村萬盛堂の経営体制移行が公表されたのは2021年10月のことでした。報道各社の取材や公表資料によると、旧石村萬盛堂が抱えていた経営課題の根本には、長年の構造的な収支バランスの悪化と、突如襲ったコロナ禍によるインバウンドおよび出張・観光客の蒸発がありました。
同社は主力である和菓子「鶴乃子」に加え、洋菓子ブランド「ボンサンク」を展開し、福岡県内外に約30店舗を構える積極的な多角化路線を歩んでいました。しかし、百貨店や商業施設への出店に伴う固定費の増大、さらには贈答用菓子市場全体の縮小がボディーブローのように財務を圧迫。そこへ2020年春以降の移動制限が直撃し、博多駅や福岡空港の売店売上が前年比70〜80%減という壊滅的な打撃を受けたことで、単独での自力再建が極めて困難な局面に追い込まれたのです。
ここで特筆すべきは、同社が選択したスキームの独自性です。外資系投資ファンドや中央の大手食品メーカーに身売りするのではなく、福岡を代表するインフラ企業である株式会社九電工を筆頭に、ふくおかフィナンシャルグループ系のアグリ・フード投資事業有限責任組合、地域情報誌を発行する地域情報センターなど、地元経済界の有力プレイヤーが出資して「新・株式会社石村萬盛堂」を設立。旧会社から菓子製造販売事業、従業員の雇用、そして歴史ある「暖簾(のれん)」をそのまま引き継ぐ新旧分離型の事業承継を完遂させました。
地域経済関係者の証言によると、「博多祇園山笠の廻り止め(ゴール地点)に本店を構える街の象徴を絶対に潰してはならない」という福岡財界の強い危機感と連帯が、迅速な救済スキームを後押ししたとされています。