ビートたけし父・北野菊次郎の壮絶人生|破天荒な漆職人の光と影
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北野菊次郎は明治32(1899)年頃に生まれ、昭和54(1979)年に80歳前後で生涯を閉じました。その生涯を一言で表すならば、「昭和の下町を泥臭く生きた典型的な腕利き職人」です。
菊次郎の本職は、建具や家具、蒔絵などに漆を施す「漆塗り職人(塗装職人)」でした。現在のように化学塗料やスプレーガンが普及していなかった昭和初期から高度経済成長期にかけて、漆塗りは極めて高度な専門技術を要する仕事でした。刷毛一本で狂いなく均一な皮膜を作り出す彼の腕前は界隈でも評判で、本気で仕事に向き合っているときの菊次郎は、近隣の職人からも一目置かれる存在だったと伝えられています。
しかし、職人としての卓越した腕前とは裏腹に、私生活では大きな影を抱えていました。素面のときは極端に内気で、近所の人に挨拶されると下を向いて逃げ出してしまうほどの人見知り。ところが、一滴でもアルコールが入ると性格が豹変し、大声を上げて暴れ回る「酒乱」へと変貌を遂げました。この極端な落差こそが、北野家の波乱に満ちた日々の引き金となっていたのです。