おしん横綱・隆の里の凄絶人生と稀勢の里を生んだ異端指導の真実

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1970年代後半、幕内上位で頭角を現しながらも、突如として襲いかかった原因不明の体調不良。診断結果は糖尿病だった。当時の医学的見地からも、力士という職業の過酷な食生活と激しい稽古を考慮すれば、それは実質的な引退勧告に等しい絶望的な宣告だった。体重は激減し、かつての筋骨隆々とした肉体は急速に萎んでいく。

だが、彼は諦めなかった。白米の摂取量を厳密に計量し、食事ごとに栄養バランスを計算。酒を断ち、当時はまだ角界で異端視されていたウェイトトレーニングや科学的な有酸素運動を自らに課した。己の身体を実験台にするかのような徹底した節制生活は、放送作家やファンから、当時大ヒットしていた連続テレビ小説になぞらえて「おしん」と称されるようになる。

肉体の衰えを精神の研鑽と緻密な戦略で凌駕し、30歳という遅咲きで掴み取った綱の座。土俵下で見せた寡黙な眼光の裏には、病魔という見えない敵と24時間戦い続けた男にしか宿らない、凄絶な覚悟が刻まれていた。

鈴木 陽菜

鈴木 陽菜

テックライター兼ウェブディレクター

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