甲殻類アレルギーなら貝も危険?誤解だらけの交差反応と真相
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生物学的に別物であるにもかかわらず、なぜ甲殻類アレルギーの人が貝を食べて症状を出してしまう事例が存在するのでしょうか。その原因物質として特定されているのが、筋肉の収縮を制御するタンパク質「トロポミオシン」です。
トロポミオシンは、人間をはじめとするあらゆる動物の筋肉に存在しています。ただし、脊椎動物(牛、豚、鶏、魚など)のトロポミオシンと、無脊椎動物のトロポミオシンではアミノ酸の並び順(配列)が大きく異なっています。人間が無脊椎動物のトロポミオシンをアレルゲンとして認識しやすいのに対し、無脊椎動物同士――すなわち甲殻類と軟体動物の間では、このトロポミオシンの構造が部分的に酷似しています。
甲殻類に対して作られたIgE抗体が、形状の似ている軟体動物のトロポミオシンを「エビやカニと同じ敵だ」と勘違いして結合してしまう現象を「交差反応」と呼びます。この交差反応が起きると、軟体類アレルギーとして以下のような多様な症状が引き起こされます。
- 即時型の口腔症状:唇の腫れ、口内のイガイガ感、喉の締め付け感
- 皮膚・粘膜症状:全身のじんましん、強い痒み、まぶたの腫脹
- 消化器症状:激しい腹痛、吐き気、下痢
- 重篤な全身症状:呼吸困難、血圧低下、意識混濁を伴うアナフィラキシーショック
同じ軟体動物であるイカやタコに対しても同様の機序が働き、イカタコアレルギーを併発するパターンが見られます。臨床研究の蓄積によると、エビやカニに強いアレルギーを持つ人のうち、貝類に対しても臨床的なアレルギー症状を示す人の割合はおよそ10〜15%程度と推計されています。決して全員ではないものの、無視できない確率で交差反応が潜んでいる点が、判断を複雑にしている本質です。