『かぐや姫の物語』帝のアゴに隠された衝撃真相と高畑勲の真意
『かぐや姫の物語』帝のアゴに隠された衝撃真相と高畑勲の真意の全体像を詳しく解説してご紹介します。
『かぐや姫の物語』の後半において、もっとも緊迫感に満ち、一部の視聴者から「トラウマシーン」として語られるのが、帝による不意打ちの抱きつきシーンです。
御所の庭園に招かれたかぐや姫に対し、帝は背後から忍び寄り、逃げ場を奪うようにその細い身体を両腕で拘束します。現代の視点で見れば明白な同意のない身体的接触であり、かぐや姫にとっての心理的境界線(バウンダリー)が完全に蹂躙された瞬間でした。耳元で囁かれる甘言と、逃れられない特権階級の腕。その恐怖と拒絶反応の凄まじさは、直後に描かれるかぐや姫の表情の激変と、光となって消え去るような心理的脱出描写に如実に現れています。
原作である古典『竹取物語』において、帝は求婚こそするものの、かぐや姫が月へ帰った後も彼女を偲んで和歌を詠む「風流で理解のある君主」として美化されていました。しかし高畑監督はそのロマンティシズムを容赦なく剥ぎ取りました。「自分の愛を受け入れないはずがない」という傲慢な男の押し付けによって、かぐや姫は絶望の極致に達し、無意識のうちに「助けて」と月へ救いを求めてしまったのです。物語最大の悲劇である「地球からの追放」の引き金を引いたのは、他ならぬ帝の無神経な抱擁でした。