大迫傑のVo2Maxと心肺の真実|世界と戦う驚異の数値と走りを解剖

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ランニングコミュニティやSNSでしばしば見られる大きな誤解があります。それは、「VO2maxが高ければ高いほど、フルマラソンは速く走れる」という単純な神話です。しかし、現代のスポーツ科学において、この命題はすでに部分的に否定されています。

VO2maxはあくまで「取り込める酸素の上限値」を示す潜在能力(ポテンシャル)に過ぎません。フルマラソンという長丁場において、選手はその上限値の100%で走り続けることは不可能です。実際にレース中に使われるのは、VO2maxのおよそ75〜85%前後のゾーン。ここで勝負の明暗を分けるのが、以下の2つのファクターです。

第1に、ランニングエコノミー(走りの燃費)です。同じ速度で走るとき、より少ない酸素消費量で巡航できるランナーが最終的に勝ちます。大迫選手が習得した洗練されたフォアフット走法は、着地衝撃をアキレス腱の弾性エネルギーに変え、筋力への依存を極限まで減らす技術でした。バネのように身体を前方へ跳ね返す効率的なフォームを手に入れたことで、彼は持てる心肺機能を過剰に浪費することなく、キロ2分55秒前後の世界ペースを維持できるようになったのです。

第2に、前述した乳酸閾値 LT値です。乳酸が血中に急激に溜まり始めるポイントをいかに高い速度域まで引き上げられるか。大迫選手は、VO2maxという巨大なエンジンを持ちながら、その燃費を極限まで高めるバイオメカニクスを融合させたからこそ、日本記録を2度にわたって更新することができました。「心肺機能が高いから強い」のではなく、「高い心肺機能を無駄遣いしない技術があるから強い」というのが現場の真実です。

山下 哲也

山下 哲也

自動車・モビリティライター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。

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