「地上の楽園」と呼ばれた北朝鮮の真相|9万人を騙した帰国事業の実態と現在
「地上の楽園」と呼ばれた北朝鮮の真相|9万人を騙した帰国事業の実態と現在の総合ガイドをご紹介します。役立つ情報が詰まっています。
「地上の楽園」という扇情的なスローガンは、突如として生まれたものではありません。その発端と背景には、朝鮮戦争(1950〜1953年)後の北朝鮮が直面していた深刻な労働力不足と、東西冷戦下における体制間競争が存在していました。
当時、北朝鮮の指導者・金日成(キム・イルソン)は千里馬(チョンリマ)運動と呼ばれる猛烈な増産運動を推進しており、復興のための労働力、とりわけ技術者や教育水準の高い人材を喉から手が出るほど求めていました。そこで標的となったのが、日本に暮らす在日朝鮮人コミュニティです。
北朝鮮本国と在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)は、1950年代後半から大々的なキャンペーンを展開。「すべての人が平等で、税金はなく、立派な住宅と職が与えられる社会主義の桃源郷」として「地上の楽園」という言葉を組織的に流布させました。映画、パンフレット、集団学習会を通じて美しいプロパガンダ映像が連日見せられ、多くの人々がその虚構を真実だと信じ込まされたのです。
さらにこの虚構に拍車をかけたのが、当時の日本の進歩的知識人や大手メディアの無批判な論調でした。現地の徹底した情報統制と演出されたモデル都市・平壌の案内を鵜呑みにし、「社会主義の奇跡」「東洋のスイス」などと紙面で絶賛。客観的なファクトチェックを欠いた報道が、一般市民の警戒心を完全に麻痺させてしまいました。