なぜ女優はあるのに男優と呼ばない?俳優との違いと呼称の真相
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もう一つの重要な要素は、日本の伝統芸能がたどってきた歴史です。ここで気になるのが役者と俳優の違い、そしてなぜわざわざ「女優」という言葉だけが新造されたのかという点です。
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「役者」とは、元々は寺社で特定の役目を務める者を指し、室町時代から江戸時代にかけて能や狂言、歌舞伎で役を演じる演者を呼ぶ職名として定着しました。歌舞伎の舞台に立つ人は今でも「歌舞伎役者」と呼ばれ、職人気質や芸道を受け継ぐニュアンスを色濃く残しています。一方の「俳優」は、明治時代に西洋演劇(新劇)が日本に輸入された際、英語の「actor」の訳語として再評価され、近代的な職業名として一般化しました。
江戸時代の歌舞伎は風紀上の理由から女性の出演が禁じられ、すべての役を男性(女形)が演じる文化が確立していました。つまり、日本の演劇界において「舞台に立つ者=男性」が長らくデフォルト(標準)だったわけです。
明治期に入り、日本初の西洋式演劇学校などで女性の演劇人が誕生した際、当時の社会にとっては「女性が舞台に立つこと」そのものが極めて珍しい出来事でした。そのため、従来の男性標準の世界と区別するために、新奇性のある言葉として「女優」という呼称が誕生したのです。ベースが男性であったがゆえに「男優」とわざわざ特記する必要がなく、「俳優=男性の演者」として社会に受け入れられていきました。