住吉の長屋は雨の日に傘が必要?安藤忠雄の傑作と現在の住み心地を解剖

住吉の長屋は雨の日に傘が必要?安藤忠雄の傑作と現在の住み心地を解剖の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点で紐解きます。

気になる実際の住み心地はどうだったのでしょうか。結論から言えば、現代の快適住宅基準に照らせば「極めて過酷」と言わざるを得ません。

夏はコンクリートが熱を蓄えて内部が蒸し風呂のようになり、冬は底冷えが厳しく「室内で吐く息が白い」ことも珍しくありませんでした。安藤忠雄氏自身、当時の手記や数々のメディアインタビューで施主に対する本音をこう述懐しています。

「寒ければ一枚余計に着ればいい。暑ければ脱げばいい。自然と共に生きるということはそういうことだ」

並みの施主であれば大クレームに発展し、即座に中庭へガラス屋根を架ける改修工事を行っていたはずです。しかし、施主である東(あずま)夫妻の姿勢は常人の域を超えていました。東氏は「この家に合わせて自分たちの身体と生活を変えていく」ことを選び、中庭に屋根をつけることなく、何十年にもわたってこの空間を愛し、大切に住み続けたのです。

朝、中庭を見上げると切り取られた四角い空が広がり、雨の日は滴る水音を聴きながらコーヒーを飲む。冬の厳しさも夏の暑さも、自然の移ろいの一部として引き受ける——。住吉の長屋の真の完成者は、設計した安藤忠雄氏だけでなく、この過酷な思想を受け止め切った施主の東夫妻の精神性であったと言えます。

林 結菜

林 結菜

ライフスタイル編集者

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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