犬の舌の色でわかる重篤な病気|紫や白・赤への変色と受診の緊急度判定

犬の舌の色でわかる重篤な病気|紫や白・赤への変色と受診の緊急度判定に関する深掘り解説を詳しく解説いたします。

犬の舌に現れる異常色は、主に5つのパターンに分類される。それぞれの色が示す背後疾患と、体内で起きている病理現象を正しく把握しておく必要がある。

① 犬の舌が紫色の原因とチアノーゼ(低酸素状態の危機)
舌や口腔粘膜が青紫色、あるいはどす黒い赤紫色に変色している場合、医学的にはチアノーゼと呼ばれる状態に陥っている。血中の還元ヘモグロビン濃度が5.0g/dL以上に増加した際に発生する現象で、体内組織へ酸素が全く行き届いていないことを意味する。主な原因として、僧帽弁閉鎖不全症などに伴う急性肺水腫、重度の気管虚脱、肺炎、異物誤嚥による気道閉塞が挙げられる。犬の低酸素状態と呼吸困難の経緯を辿ると、舌が紫色に変色した時点ですでに呼吸困難の極期に達しており、数分〜数十分以内に呼吸停止へ至るリスクが極めて高い。

② 犬の舌が白っぽい貧血のサイン(循環血液量枯渇の恐怖)
舌や歯茎から赤みが完全に抜け落ち、白っぽく、あるいは半透明な蒼白に見えるケースは重度の貧血を示している。犬の自己免疫が自身の赤血球を破壊してしまう免疫介在性溶血性貧血(IMHA)や、脾臓に発生した血管肉腫の破裂による腹腔内大出血が代表例だ。特に脾臓腫瘍の破裂は外傷がないため外見からは出血に気づきにくく、「急にぐったりして舌が真っ白になった」という主訴で救急搬送されるケースが後を絶たない。赤血球の割合を示すヘマトクリット値(PCV)が危険水域である15%未満まで急落している恐れがあり、一刻を争う輸血処置が必要となる。

③ 犬の舌が赤く腫れる熱中症の症状(多臓器不全のプロローグ)
舌が異常なほど鮮紅色、あるいは充血して暗赤色に腫れあがり、大量のよだれを垂らしながら激しくパンティング(浅く速い呼吸)を繰り返している場合、熱中症の急性期症状が疑われる。犬は体表に汗腺がほとんどないため、舌を出して水分を蒸発させるパンティングによって体温調節を試みる。しかし、外気温や湿度の高さによって放熱が追いつかなくなると、舌の血管が極限まで拡張して赤く腫脹する。直腸温が40.0℃以上に達すると、体内のタンパク質変性や全身性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こし、脳浮腫や多臓器不全により致死率が跳ね上がる。

④ 黄色(黄疸と重篤な肝・胆道系障害)
舌の裏や歯茎、白目の部分が黄色味を帯びている場合、血中のビリルビン値が異常上昇する「黄疸」が起きている。肝硬変や重度肝炎などの肝不全、胆管閉塞、あるいは急性溶血性疾患によって大量の赤血球が壊された際に生じる。放置すれば肝性脳症を発症し、意識混濁や痙攣を引き起こす危険な病態だ。

⑤ 犬の舌に黒い斑点が出る理由(色素沈着とメラノーマの鑑別)
舌の表面に黒や濃紺のシミのような斑点が現れる現象には、良性の生理的変化と致死的な悪性腫瘍の双方が存在する。生まれつき、あるいは成長に伴ってメラニン色素が沈着する「舌斑(ぜっぱん)」は完全に良性であり、痛みを伴わず平坦な状態を保つ。一方で警戒すべきは、犬の舌のメラノーマ悪性腫瘍(悪性黒色腫)だ。口腔内メラノーマは極めて悪性度が高く、進行が非常に速い。舌にできた黒い病変がわずか数週間でカリフラワー状に盛り上がり、表面が崩れて出血や激しい悪臭を放つようになる。初期のうちに良性斑点と誤認して放置すると、高確率で所属リンパ節や肺へ遠隔転移を果たす。

なお、例外的な犬種特性として知られるのがチャウチャウの青い舌の遺伝的理由である。チャウチャウやシャーペイは、進化の過程において口腔粘膜および舌の粘膜固有層に高密度のメラニン細胞が沈着する遺伝的変異が固定化されており、健康な状態であっても青藍色から暗紫色の舌をしている。愛犬の生来的な品種特性と後天的な変色を混同してはならない。

鈴木 陽菜

鈴木 陽菜

テックライター兼ウェブディレクター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。

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