トラウマインフォームドケアの全貌|現場を変革する4つの原則と実践
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支援の現場で怒鳴り声を上げる患者、突然授業を飛び出す生徒、あるいは対人関係を自ら壊してしまうクライエントに対し、従来のシステムは「本人の規範意識の欠如」や「性格的な偏り」として対応してきました。これに対して、トラウマインフォームドケアをわかりやすく表現するならば、「問題行動(Symptoms)を、過酷な環境を生き延びるために身につけた適応戦略(Coping Mechanisms)として捉え直す眼鏡」といえます。
春日メンタルクリニックなどの医療機関や支援団体が発信している通り、TICはトラウマそのものを心理療法で治療する行為を指す言葉ではありません。「この人はトラウマを抱えているかもしれない」という感受性を組織の全員が共有し、関わり方の前提を変える包括的な枠組みです。
この考え方を強力に後押ししている科学的根拠が、CDC(米国疾病予防管理センター)などの大規模調査で知られるACEs(逆境的小児期体験:Adverse Childhood Experiences)の研究です。虐待、ネグレクト、家庭内の不和といった小児期の逆境体験は、成人後のうつ病や依存症のみならず、心疾患や自己免疫疾患といった身体的健康障害のリスクを有意に跳ね上げることが明らかになっています。日本国内の臨床調査でも、精神科入院患者や非行少年のうち60%〜80%以上が何らかの深刻なトラウマ体験を持つと報告されており、「トラウマは特殊な人の特別な悲劇ではなく、支援を必要とする多くの人々が抱える普遍的な背景である」という共通認識が不可欠となっています。