バリウム検査は拒否できる?法的義務の真相と会社に角を立てない断り方
バリウム検査は拒否できる?法的義務の真相と会社に角を立てない断り方とは一体何なのか? 主要なファクトを簡潔に解説します。
「会社で行われる健康診断なのだから、すべての項目を受けなければ職務怠慢になる」という認識は、労働法と医療行政の双方から見て完全な誤解です。根拠となるのは、企業の健康診断実施を義務付けている労働安全衛生法第66条および労働安全衛生規則第44条の条文です。
労働安全衛生規則第44条に規定されている「定期健康診断」の必須項目は以下の11項目に限定されています。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無)
- 心電図検査
条文をどれほど詳細に確認しても、胃部エックス線検査(バリウム検査)の記載は一文字もありません。胸部レントゲンは呼吸器疾患や結核予防の観点から法定必須項目に指定されていますが、胃検査は法律上の義務ではないのです。
ではなぜ、多くの企業で35歳や40歳を超えると当たり前のようにバリウム検査が組み込まれているのでしょうか。その理由は、企業が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や各企業の「健康保険組合」が実施する生活習慣病予防健診の推奨パッケージに胃がん検診が含まれているからです。これはあくまで健康保険組合側の保健事業(サービス提供)の一環であり、労働安全衛生法上の胃検査に義務なしという事実は揺るぎません。
したがって、労働者が胃部X線検査の受診を拒否したとしても、企業が懲戒処分を下したり、評価を下げたりといった不利益な取り扱いをすることは労働契約法上も許されません。会社側が受診を強制する法的な根拠は初めから存在しないのです。