長距離走ですぐバテる人と楽に走れる人の決定差|最新の科学と現場検証

長距離走ですぐバテる人と楽に走れる人の決定差|最新の科学と現場検証の注目ポイントを丁寧に掘り下げてご紹介します。

市民マラソンや学校の体力測定の現場を取材すると、序盤で軽快に先行した走者が中間地点を境に次々と歩き出す光景を日常的に目にします。現場のスポーツ指導者は「すぐバテるランナーの約8割は、スタート直後の3分間で自らのレースを台無しにしている」と警鐘を鳴らします。その背景にあるのが、乳酸閾値(LT値)と呼ばれる生理学的なボーダーラインです。

人間の体内には、瞬発的に大きなパワーを出す「糖質」と、持続的に燃焼する「脂質」という2つのエネルギー源が備わっています。運動強度がLT値を超えた瞬間、筋肉内では糖質が急速に分解され、代謝産物としての水素イオンが蓄積し、筋収縮が物理的に阻害されます。フルマラソンを楽に完走できるランナーは、レース前半を徹底して脂質優位の「低燃費ゾーン(ゾーン2)」で巡航し、限られたグリコーゲンを後半まで温存しています。これに対し、失速する走者はスタート直後の高揚感に任せてLT値以上のスピードを出してしまい、筋肉内の糖を序盤で空っぽにしているのです。

また、失速を招くもう一つの元凶が「ブレーキ動作」の蓄積です。疲れない走り方を体得している走者は、着地衝撃を推進力へと変換する弾性エネルギー(SSC:ストレッチ・ショートニング・サイクル)を巧みに利用します。一方、バテる走者は前方へ足を大きく投げ出す「オーバーストライド」に陥り、1歩ごとに自重の約3倍に達する制動ブレーキを大腿四頭筋にかけ続けています。この微細な筋損傷の蓄積こそが、後半30km以降に襲いかかる「脚が前に出ない現象」の正体です。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。

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